労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の人には特別に任意加入を認めています。これが、特別加入制度です。
このホームページは、一人親方等の特別加入について、その加入者の範囲、加入手続、加入時健康診断、業務災害・通勤災害の認定基準(保険給付の対象となる災害の範囲)などに関して、特に注意していただきたい事項を説明しています。特別加入を希望する方はもちろん、すでに加入されている方もご一読いただき、特別加入制度についてご理解いただきますようお願いいたします。
労働者を使用しないで次の①~⑦の事業を行うことを常態とする一人親方その他の自営業者およびその事業に従事する人(以下「一人親方等」と言います)が特別加入できます。
(注)詳細については、表1を参考にしてください。
(注)除染を目的として行う高圧水による工作物の洗浄や側溝にたまった堆積物の除去などの原状回復の事業も含みます。
オ 自ら保有する二輪の自動車を、バイク便事業者※に持ち込んで、当該バイク便事業者に専属して貨物を運送する者であって、道路運送法(昭和26年法律第183号)第78条第3項の有償運送の許可を受けた者
※エのうち、二輪の自動車を使用する貨物軽自動車運送事業を行う者をいう。
(注)労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、一人親方等として特別加入することができます。
一人親方等の特別加入については、一人親方等の団体(特別加入団体)(注)を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行います。特別加入の手続きは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体が行うことになっています。
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(注)特別加入団体の要件
申請書には、「一人親方等の団体における定款、規約などの目的、組織、運営などを明らかにする書類」と「業務災害の防止に関して一人親方等の団体が講ずべき措置および一人親方等が守るべき事項を定めた書類」を添付しなければなりません。ただし、船員法第1条に規定する船員が行う事業の団体については、業務災害の防止に関する書類の添付は必要ありません。
特別加入の申請に対する労働局長の承認は、申請の日の翌日から30日以内で申請者が加入を希望する日となります。
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特別加入団体として承認されている団体に申し込んでください。加入手続きはその団体が行います。
※お近くの特別加入団体については、都道府県労働局または労働基準監督署にお問い合わせください。
特別加入団体は、以下の場合には特別加入に関する変更届(以下「変更届」といいます)を提出することになっています。
変更届の記入については、こちらの記入例を参考にしてください。
②の場合は、「特別加入者の異動(新たに特別加入者になった者)」欄に必要な事項を記入します。
③の場合には、「特別加入者の異動(特別加入者でなくなった者)」欄に必要な事項を記入します。
(ご注意)
業務災害または通勤災害が発生した後に変更届を提出されても、すでに発生した災害の給付には反映されません。
一人親方等として特別加入している方が、東日本大震災の復旧・復興のため、新たに除染の業務に就く場合には、業務内容に変更があった旨の届出が必要です。なお、除染作業を行う一人親方等の所属する特別加入団体は、迅速・適正な労災補償を行うため、労働者と同様の被ばく線量管理をしていただくようお願いします。
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表2に記載されている業務に、それぞれ定められた期間従事したことがある場合には、特別加入の申請を行う際に健康診断を受ける必要があります。
粉じん作業を行う業務
振動工具使用の業務
鉛業務
有機溶剤業務
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手続きの流れ
※お近くの診断実施機関については都道府県労働局または労働基準監督署にお問い合わせください。
※加入時健康診断の費用は国が負担しますが、交通費は自己負担となります。
※じん肺健康診断を受けた場合には、じん肺の所見がないと認められた場合を除き、健康診断証明書にエックス線写真を添付する必要があります。
(ご注意)
健康診断証明書を提出しなかったり、業務の内容や業務歴などについて虚偽の申告をした場合には、特別加入の申請が承認されない、または、保険給付が受けられないことがあります。
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加入時健康診断の結果が次のような場合には、特別加入が制限されます。
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特別加入前に疾病が発症、または加入前の原因により発症したと認められる場合には、特別加入者としての保険給付を受けられないことがあります。
特別加入者に関する業務上の災害として保険給付の対象となる疾病は、特別加入者としての業務を遂行する過程において、その業務に起因して発症したことが明らかな疾病に限定されます。特別加入前に発症した疾病や特別加入前の事由により発症した疾病に関しては、保険給付の対象となりません。
したがって、加入時健康診断の結果、疾病の症状または障害の程度が、特別加入についての制限を行う必要のない程度であった場合であっても、加入時点における疾病の程度および加入後における有害因子へのばく露濃度、ばく露期間などからみて、加入前の業務に主たる要因があると認められる疾病については、保険給付は行われません。
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給付基礎日額とは労災保険の給付額を算定する基礎となるもので、申請に基づいて労働局長が決定します。給付基礎日額を変更したい場合は、事前(3月2日~3月31日)に「給付基礎日額変更申請書」を監督署長を経由して労働局長あて提出することによって、翌年度より変更することができます。
また、労働保険の年度更新期間中にも「給付基礎日額変更申請書」により当年度に適用される給付基礎日額の変更が可能です。
ただし、災害発生前に申請することが前提になります。給付基礎日額変更申請書を提出する前に災害が発生している場合は、当年度の給付基礎日額変更は認められませんので、給付基礎日額の変更を検討されている方は、事前の手続きをお勧めします。
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年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)にそれぞれの事業に定められた保険料率(表4参照)を乗じたものになります。
なお、年度途中で、新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、その年度内の特別加入月数(1か月未満の端数があるときは、これを1か月とします)に応じた保険料算定基礎額により保険料を算出します。
給付基礎日額(A) | 保険料算定基礎額(B) B=A×365日 |
年間保険料(C)
C=B×保険料率(注)
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25,000円 | 9,125,000円 | 164,250円 | 109,500円 |
24,000円 | 8,760,000円 | 157,680円 | 105,120円 |
22,000円 | 8,030,000円 | 144,540円 | 96,360円 |
20,000円 | 7,300,000円 | 131,400円 | 87,600円 |
18,000円 | 6,570,000円 | 118,260円 | 78,840円 |
16,000円 | 5,840,000円 | 105,120円 | 70,080円 |
14,000円 | 5,110,000円 | 91,980円 | 61,320円 |
12,000円 | 4,380,000円 | 78,840円 | 52,560円 |
10,000円 | 3,650,000円 | 65,700円 | 43,800円 |
9,000円 | 3,285,000円 | 59,130円 | 39,420円 |
8,000円 | 2,920,000円 | 52,560円 | 35,040円 |
7,000円 | 2,555,000円 | 45,990円 | 30,660円 |
6,000円 | 2,190,000円 | 39,420円 | 26,280円 |
5,000円 | 1,825,000円 | 32,850円 | 21,900円 |
4,000円 | 1,460,000円 | 26,280円 | 17,520円 |
3,500円 | 1,277,500円 | 22,995円 | 15,330円 |
(注)特別加入者全員の保険料算定基礎額を合計した額に千円未満の端数が生じるときは端数切り捨てとなります。
(注)保険料率は平成30年度のものです。
特別加入の種類 | 保険料率(注) |
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自動車を使用して行う旅客または貨物の運送の事業 | 12/1000 |
建設の事業 | 18/1000 |
漁船による水産動植物採捕の事業 | 45/1000 |
林業の事業 | 52/1000 |
医薬品の配置販売の事業 | 7/1000 |
再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業 | 14/1000 |
船員法第1条に規定する船員が行う事業 | 48/1000 |
(注)保険料率は平成30年度のものです。
業務災害または通勤災害を被った場合のうち、一定の要件を満たすときに労災保険から給付が行われます。
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保険給付の対象となる災害は、加入者ごとに一定の業務を行っていた場合に限られています。次に該当する場合に保険給付を受けることができます。
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通勤災害については、一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。
ただし、上記のうち次の一人親方等については、通勤災害の保護の対象となっていません。
「通勤災害」とは、通勤により被った負傷、疾病、障害または死亡をいいます。この場合の「通勤」とは、就業に関し、①住居と就業の場所との間の往復 ②就業の場所から他の就業の場所への移動 ③赴任先住居と帰省先住居との間の移動を、合理的な経路および方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとしています。これらの移動の経路を逸脱・中断した場合は、その逸脱・中断の間およびその後の移動は通勤となりません。ただし、その逸脱・中断が、日常生活上必要な行為であって日用品の購入などをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合は、合理的な経路に戻った後の移動は「通勤」となります。
特別加入者が業務災害または通勤災害により被災した場合には、所定の保険給付が行われるとともに、これと併せて特別支給金が支給されます。
特別加入者に対する保険給付および特別支給金の種類は、表5のとおりです。
20日間休業した場合
障害(補償)年金
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合
障害(補償)一時金
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合
障害(補償)年金の場合
第1級は給付基礎日額の313日分~第7級は給付基礎日額の131日分が支給されます。
障害(補償)一時金の場合
第8級は給付基礎日額の503日分~第14級は給付基礎日額の56日分が支給されます。
第1級の場合
第1級の場合
遺族(補償)年金
業務災害または通勤災害により死亡した場合
(年金額は遺族の人数に応じて異なります)
遺族(補償)一時金
遺族(補償)年金の場合
遺族(補償)一時金の場合
遺族(補償)年金で遺族が4人の場合
遺族(補償)一時金支給事由①で遺族が4人の場合
よって、高い額の1.が支払われます
常時介護を要する者
随時介護を要する者
(注1)「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に対して支給される保険給付の名称です。
(注2)原則、給付の範囲は健康保険に準拠しています。
(注3)休業(補償)給付については、特別加入者の場合、所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業について全部労働不能であることが必要となっています。全部労働不能とは、入院中または自宅就床加療中もしくは通院加療中であって、補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業ができない状態をいいます。
(注4)遺族(補償)年金の受給資格者である遺族が1人であり、55歳以上または一定の障害状態にある妻の場合には、給付基礎日額の175日分が支給されます。
(注5)表中の金額は、平成29年3月1日現在のものです。[ ]の額は平成29年4月1日改正予定額です。
※船員保険の適用を受ける船員の方が、労災保険給付を受けたときには、船員保険の上乗せ給付がある保険給付について、全国健康保険協会に対し、上乗せ給付の請求を行うことができます。
特別加入者が業務災害または通勤災害を被った場合には保険給付が行われますが、その災害が特別加入者の故意または重大な過失によって発生した場合や保険料の滞納期間中に生じた場合には、支給制限(全部または一部)が行われることがあります。
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一人親方等の団体は、労働局長の承認を受けて脱退することができますが、この脱退の申請は、その団体の構成員全員を包括して行わなければなりません。この場合、その団体は、監督署長を経由して労働局長に「特別加入脱退申請書(中小事業主等及び一人親方等)」を提出し、承認を受けることが必要です。
特別加入の脱退申請に対する労働局長の承認は、脱退申請の日から30日以内で申請者が脱退を希望する日となります。
(注)一人親方等のうち、特定の人のみを脱退させる場合は、変更届を提出することが必要です。
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一人親方等の団体が関係法令の規定に違反した場合には特別加入の承認が取り消される場合があります。